宇宙鯨

インドの音楽に宿る宇宙。 

インドの音階では、西洋音階のドレミファソラシドをSa,Re,Ga,Ma,Pa,Da,Ni,Saと呼び、演奏される際にそれぞれの音がそれぞれの性格、性質を持ちます。

それらの音のうつろいから感じる世界を一枚の絵にしました。



画面の最下部がSa、そこから上にRe、Ga…と順に上がっていって、最上部が高いSaのイメージです。

下から順に解説していきますね。

Sa 蓮華座。色々な神様が蓮の花の上に座る姿が描かれる事がありますが、この絵の蓮はタンプーラのSaの音とともに深海の底で開花する、Saの音でできた、私の内に宿る蓮の花の座のイメージ。

音を奏でる私達は1人ひとりがそれぞれのSaの音でできた蓮の座の上に座り、自分だけの音の宇宙を立ち上げていく。

奏で終える時には、タンプーラの音に耳を澄ませてSaの音を出しながら蓮の花が閉じていくイメージを持っています。演奏のたびに開いては閉じる蓮の花。

Re♭ 副虹。通常の虹と色の順番が反対になっています。

二重にかかる虹の外側に現れるもうひとつの虹(副虹)の色順。太陽の虚像である虹がさらに反射することで奇跡的に可視化される副虹。光と水によって生まれる、繊細で美しくて儚いもの。

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Re 水面。アンドーリタの表現。ロングノーツの時は波ひとつない澄んだ水面が、音を動かすと波立つ。

胎内にいた時のように暖かい水の中で漂いながら、水面近くまで浮かんでいって地上の景色を見るともなく見ているような音。

Ga♭ 太古の生物が海から陸に上がった時のような、生命の芽吹く気配や進化の音。

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Ga 原始的な生命力。地上に生きるものたちのざわめき。人間讃歌のような。ガネーシャ神の無垢で明るいエネルギー。

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Ma ヒマラヤ山脈。地球のプレートの動きによって何千万年もかけて隆起したヒマラヤはまるで地球が自分の意思で天に手を伸ばしているようで。 重力に逆らって力強くせり上がるようなシヴァ神のエネルギー。


Ma♯ 赤紫のグラデーション。

Maより下の重力の世界とPaより上の浮力の世界を繋ぐ、異界の扉のような立ち位置。あたたかく心地よく次元がズレる感じ。

背景の曼荼羅のような模様は中心から外側にかけて、また下部から上部に向かってMaからNiまでのイメージ。重力の世界から浮力を得て音色が色彩を帯び始めるような。

月が満ちていく予感のような。


Pa 深海から飛び上がり宇宙を漂う鯨。浮力のイメージ。

そして画の中心ということで、音に集う奏者達のイメージも重ねています。

鯨の行動範囲は数万キロ、150キロ離れたところにいる仲間と歌を使ってコミュニケーションしています。

​北半球と南半球でそれぞれ別の歌を歌い、歌う歌は一年ごとに変わるそう。

​それが何故かは解明されていないようです。

音を使って世界中の奏者達と音楽によって交信し響きあっている私達は宇宙を悠々と泳いでいるような鯨のようだなと、鯨になった気持ちで音を愛でる。


Dha 北極星。正しい方向を指し示す光。

Dhaに向かってまっすぐに音を放つ事でその先のNi Sa=神様のいる方向、真理の方向に導かれていくような。

Ni♭ Niとの間に立ち上がる世界、揺らぐふたつの音の粒に光が反射して弾けて、ふいに虹が浮かび上がるような実像と虚像の間にある世界。

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Ni 大いなるものの気配。北極星の背景に広がる宇宙空間。

Reの水面にNiの世界が映り込んでいる描写は、現在私がReとNiのふたつの音の響きを合わせ鏡のように対比させて味わっているからです。


 Sa 天頂からの光。

何もないけど全てがある所。画面の中では何も描かずに空白になっています。



​​この作品は、オリジナルフルアルバム「あちゃうた」のカバーイラストに使用しています。

Acha's works

日常と背中合わせの宇宙を えがく うたう

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